本文へジャンプ

大会長挨拶

第40回日本バイオマテリアル学会大会
大会長 山岡 哲二
国立循環器病研究センター研究所 生体医工学部 部長

バイオマテリアル(生体材料)は、生体に直接接触させて使用する材料を意味し、医療・福祉・公衆衛生に資する機器やシステムの開発を目的としています。1990年代中後半、金属、セラミックス、合成高分子、生体由来物質を材料とした縫合糸、人工血管、人工関節、眼内レンズ、補助人工心臓、人工透析、冠動脈ステントなどの医療機器が次々と開発されました。そのような時代に、バイオマテリアルの教育、研究、産業に関する情報の交換を通して、新学問領域としての体系化と確立および臨床医療への応用を計るために1978年に本学会は設立されました。今では、会員数が1300人を超える世界で最も大きなバイオマテリアル関連の学会です。今年で設立40年を迎えることができましたのも、ひとえに、会員の皆様方のご支援のたまものと感謝しております。

学会設立から40年のあいだに、バイオマテリアル研究を取り巻く研究領域は大きく変化しました。分子生物学の大きな進歩は、材料と細胞との相互作用を細胞の数や形状だけでなく機能や分化ステージを捉えることを可能にし、イメージング装置やさまざまな解析装置の進化により、三次元的、かつ、定量的に評価することができるようになりました。また、我が国はiPSなどの幹細胞の研究で世界をリードする状況にあり、“細胞”が治療用の“材料(ツール)”として認識されるようになっています。幹細胞等を利用した再生医療に関しては2013年に再生医療新法が成立してその法的整備が整い、2015年には国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)が設立されて先端技術の実用化への動きが加速しています。このような大きな環境の変化は、抗体医薬や核酸医薬などの実用化をもたらしました。バイオマテリアル研究においても、近年、このようなアプローチとの融合による新奇なデバイス創出が始まろうとしていることをひしひしと感じます。そこで、40周年記念講演で、設立時からの大きな技術革新とバイオマテリアル研究の変遷を振り返っていただくとともに、生物学とマテリアル研究の近代的融合研究で世界をリードするJons Hilborn教授にご講演頂くこととしました。

皆様とともに、来るべき“バイオマテリアル研究の新たな時代”について議論できる場になれば幸いです。