「健口第一!! -健やか生活へのいざない-」
日本歯科人間ドック学会 第16回学術大会長
日本大学松戸歯学部 歯科臨床検査医学講座 福本 雅彦
時下ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。
日本歯科人間ドック学会第16回術大会を開催するにあたりご挨拶申し上げます。
現在、我が国の平均寿命は女性85.90歳、男性79.44歳であり世界でも有数の長寿国としてランキングされています。しかしその一方で、「介護を受けたり、病気で寝たきりにならず、自立して生活できる」いわゆる健康寿命と平均寿命とは2010年の調査では男性で9年、女性では13年あまりも差があるとの報告がなされています。言い換えますとこの期間は「健やかに老いたい!」という自身の意思と少なからず反した時間を過ごすことを余儀なくされているという状況です。このような事実から、今後われわれ医療従事者に課された最重要課題はこの2つの寿命の差をいかに縮めていくかということではないでしょうか。
その策の一つとして予防医学・予防医療が挙げられます。殊に自覚症状がまだないような、いわゆる「疾病の芽」を早期に発見することにより疾病の進行を防ぐことができる「人間ドック」の受診を通じて予防医療を実践してゆくことは健康寿命を延長し、結果として平均寿命との差を縮小方向に導いていくと考えます。
以上のことを鑑み、歯科領域の医療に目を向けますと近年、口腔領域の状況と様々な全身疾患が相互に密接な関連性をもつことが明らかにされつつあります。現実に全身疾患と関連する口腔領域の症状や疾患には、糖尿病における歯周病や口臭、白血病などの血液疾患における歯肉出血や潰瘍形成、天疱瘡における口腔内水疱や糜爛形成など枚挙にいとまがありません。また、反対に口腔の疾患が全身へ大きな影響を与える場合もあるとの報告も成されてきています。
1906年医師法・歯科医師法の制定により医科・歯科の2元制となりました。以来、今日まで100年以上が経過しましたが、端的に表現すれば歯科は全身から切り離された世界、近年よく使われる表現で言う「ガラパゴス状態」でした。しかしながら現代では法制度下ではともかくとして「医学・医療」と「歯学・歯科医療」は別個のものとは考えられない状況となっているといえます。現在、医科において広く実施されている「人間ドック」の中には口腔領域に関する検査はほとんど対象になっていないのが現実です。そこで、第16回学術大会では、口腔の健康を保つことや口腔状況を把握することで全身的健康の維持や全身疾患の早期発見、早期治療が可能となり、ひいては健康寿命の延長が望めるとの観点から歯科人間ドックの有用性・必要性を検証していただきたく、「健口第一 ―健やか生活へのいざない―」をメインテーマに掲げました。
結びにご参加の先生方には活発な討論を展開していただき実り多い大会となりますよう祈念いたしまして、ご挨拶とさせていただきます。