大会長挨拶

大会長
第53回 日本臨床矯正歯科医会大会・東北大会
大会長 五十嵐 一吉

約20年前、当時の執行部が掲げたテーマは「社会に共感をもって受け入れられる医会を目指して」というものでした。その後も本会は広報事業による正しい矯正歯科治療についての啓発活動やプロボノ事業をはじめとして国民/社会に対して公益法人として幅広い活動を展開しております。本会としては社会に共感をもって受け入れられてきたと考えられる一方で、残念ながら好ましからざる治療や不適切な医療広告、治療費の精算/返金についての対応の不備などが多数認められ、消費者問題に発展する事例も少なくないというのが本邦の矯正歯科界の現状だと思われます。矯正歯科治療が社会から医療としての正しい認知を受けるために、このような状況から早急に脱却していかなければならないのは言うまでもありません。

加えて昨今の組織・団体には持続可能性、多様性の認知、環境への配慮などといった社会と共に歩む(共生する)という姿勢が強く求められるようになってきていると考えられます。矯正歯科治療が医療としての正しい評価を受け、本当の意味で今後も社会に広く受け入れられ続けるものになって欲しいという願いを込めて、本大会のテーマは「社会と共生する矯正歯科治療」と致しました。大会がその一翼を担えればと考えております。

矯正歯科治療の目的として従前より「形態と機能の改善」とは言われておりますが、「社会との共生」という観点から矯正歯科の意義や価値を社会により広く伝えるために、矯正歯科治療とは形態だけではなく機能を改善するものであることを改めて確認する機会とするべく、支部企画としてこの分野の第一人者である東京科学大学咬合機能制御学講座教授の小野卓史先生に特別講演をしていただくことになっております。皆さまご存じのように小野先生は口腔の機能と全身の関わりについての数多くの研究・発表をされており、末梢から大脳レベルまでの基礎的および臨床的研究を幅広く行われております。なお「機能の改善」については筋電図、顎運動、咬合圧、舌圧、鼻咽喉気流通気度などの「現象の計測」に止まっており、矯正歯科治療によって患者さんが咬みやすくなったと認知する仕組みについてはまだ踏み込んで調べられていないように思われます。小野先生には咬合の改善により患者さんが咬みやすくなったと感じるメカニズムについての考察をお願いし、また口腔機能の改善が全身に与える影響についてより深く掘り下げてご説明いただく予定となっておりますのでご期待ください。
さらに2026年は日本矯正歯科学会創立100周年にあたる年であり、100周年記念第85回日本矯正歯科学会学術大会大会長の東京歯科大学歯科矯正学講座 西井 康 教授にその内容の一端および準備状況等についてご講演いただく予定です。こちらも楽しみにしていただければと存じます。臨床セミナー(学術企画)、海外招待講演、会員アンコール賞発表、スタッフプログラム、商社展示、商社プレゼンテーションといったプログラムに加えて、今大会では学術委員会と共同で日本歯科専門医機構認定矯正歯科専門医の新規取得・更新に関する質問コーナーの設置を検討中です。会員個々が必要な情報を得るための有益な企画となるように鋭意準備を進めておりますので、是非ブースにお立ち寄りください。

仙台は新幹線/飛行機いずれのアクセスもよくまた会場の「ホテルメトロポリタン仙台」は仙台駅に直結しておりますので、全国から会員の皆さまにお集まりいただくのに好立地と考えます。東北支部一丸となって準備を進めておりますので、仙台で多くの皆さまにお目にかかれること、そして「社会と共生する矯正歯科治療」についてディスカッションできることを東北支部会員一同楽しみにしております。